法定相続分
相続人が数人あるときは相続財産は共有となります。法定の相続分は
①子及び配偶者が相続人のとき→各2分の1
②配偶者及び直系尊属が相続人のとき→配偶者3分の2、直系尊属3分の1
③配偶者及び兄弟姉妹が相続人のとき→配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
子、直系尊属、兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は等しいものとする。ただし、父母の一方を同じくする兄弟姉妹の相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1とする。
遺産の分割
相続財産が共有の状態のままでは、財産の管理や処分のときに各相続人が関わることになり不自由です。被相続人の遺言がないときや遺言で遺産の分割を禁じられていないときは、共同相続人は協議で遺産の分割をすることができます。民法では「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人に年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して」という遺産分割の基準を定めています。しかし、遺産分割の協議においてどのような分割の方法をとるかは相続人の自由です。遺産分割の基準は原則的な訓示規定であり、自由な意思に基づく合意である限りこの基準に従わないからといって無効とはならないようです。協議が調わないとき又は協議をすることができないときは各共同相続人はその全部または一部の分割を家庭裁判所に請求することができます。
遺産分割に関する裁判所への相談件数が増えている!
遺産分割に関する裁判所への相談件数は増加傾向にあります。2017年度の最高裁判所「司法統計年報家事事件編」によると遺産分割に関する争いの75.5%は遺産総額が5000万円以下の相続で起こっています。遺産の額の多い少ないは必ずしも関係がないようです。相続による争いは身近に起こりうる問題となっています。
もめてしまう原因は?
不動産が多く現金が少ない
相続でもめてしまう原因に相続財産が分けづらい内訳になっていることが挙げられます。相続財産に不動産の割合が多く、現金などが少ないと、均等に分けることが難しく、話し合いがもつれてしまうことが多いのです。不動産を共有とするとその後の管理や、処分等の際合意ができなかったり、さらに相続が発生したりすると共有者が多くなりトラブルになることがあります。思い入れのある家を売却するのに抵抗があったり、相続人がその家に住んでいる場合もあります。相続人の一人が不動産を相続し、他の相続人には相続分に見合う現金を渡す代償分割という方法もありますが、不動産は大きな価値がありそれに見合う現金を用意するのも難しという点があります。
相続人間の付き合いがなかったり、相続人にならないと思っていた
被相続人に離婚歴がある場合、前の配偶者との間に子がいると、その子と現在の配偶者、子が相続人となります。お互いに交流がなく、それぞれの主張があるため話し合いがまとまらず、トラブルになってしまうことがあります。
また、被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合は、兄弟姉妹間の付き合いがあまりなかったり、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合に、配偶者が兄弟姉妹も相続人であるとの認識がなく、自分がすべて相続すると思っている場合があります。
親の介護
相続人の中に親と同居して介護してきた人がいる場合、その人は自分が親の面倒を見てきたのだから財産を多くもらいたいと主張することがあります。しかし同居していない相続人からみれば、援助してもらっていたのではとか、自分も介護を手伝ったと主張するかもしれません。
相続人以外の人が口出しする
相続人同士では、それぞれの事情を考慮して、均等に分割しなくてもよいと思っていたとしても、相続人の配偶者が権利を主張して話し合いがまとまらないことがあります。初めは財産はらないと言っていたのに、後から意見を変えたりすると互いに不信感をもつこととなり話し合いがまとまりません。
相続でご家族が争うことを防ぐには
ご自身の財産を把握する
まずご自身の財産を把握しましょう。そのうえで誰にどの財産をのこしたいか、分けにくい不動産をどのように分けたらよいか、相続税が発生しそうなら、納税資産を準備したほうがよいかなど考えておきましょう。
遺言書を残す
子ども同士仲の良い兄弟であったとしても相続分の不公平感が大きいと争いになることがあります。また相続人間で交流がないなど協議をすることが難しい場合にも遺言書を作成しておくことは有効です。財産の分配に差がある場合でもご自分の想いを相続人の方に伝えることで、相続人の方に納得してもらえるかもしれません。財産の分配について口頭で伝えるだけでは法的な効力がなく、相続人間で争うことになりかねません。
生命保険を活用する
生命保険の受取金を代償分割の資金に充てたり、納税資金にあてることができます。
また、生命保険金は亡くなった方の財産ではないため、原則遺産分割協議の対象とはなりません。指定した受取人に確実に残すことができます。
生前贈与を活用する
贈与の非課税枠は受贈者(財産をもらった人)ごとに1年あたり110万円ですがその他にも以下のような非課税枠が設けられています。
①相続時精算課税制度
②婚姻期間20年以上の夫婦間の居住用不動産又は居住用不動産取得資金の贈与の配偶者控除
③子や孫に住宅取得等資金贈与非課税制度
④子や孫のための教育資金、結婚・出産・子育て資金の一括贈与に係る非課税制度
生前贈与と相続税、税金はどちらが有利かは個々の条件によって異なりますので、税金の専門家に相談することをお勧めします。